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イヌ

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曖昧さ回避

この項目では、動物のイヌについて記述しています。それ以外のイヌや犬、いぬ・戌・犬部など、他の用例については「いぬ (曖昧さ回避)」を、dog、DOGなどについては「DOG」をご覧ください。

イヌ
生息年代: 0.015–0 Ma
Siberian-husky.jpg

地質時代
1万5,000年以上前[1]- 現世
新生代第四紀更新世末期タランチアン[en]- 完新世サブアトランティックja
分類
ドメ
イン
: 真核生物 Eukaryota [2]
上界 : オピストコンタ Opisthokonta
: 動物界 Animalia
階級なし : (未整理[3]真正後生動物 Eumetazoa
(未整理)左右相称動物 Bilateria
上門 : 新口動物上門 Deuterostomia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 顎口上綱 Gnathostomata
階級なし : (未整理)四肢動物上綱 Tetrapoda [4]
(未整理)爬形類 Reptiliomorpha
(未整理)有羊膜類 Amniota
(未整理)単弓類 Synapsida
(未整理)獣弓類 Therapsida
(未整理)哺乳形類Mammaliaformes
: 哺乳綱 Mammalia
亜綱 : 獣亜綱 Theria
下綱 : 真獣下綱 Eutheria
階級なし : (未整理)
北方真獣類 Boreoeutheria
上目 : ローラシア獣上目 Laurasiatheria
階級なし : (未整理)ペガサス野獣類 Pegasoferae
(未整理)友獣類 Zooamata
(未整理)野獣類 Ferae
(未整理)食肉形類 Carnivoramorpha
: ネコ目(食肉目) Carnivora
亜目 : イヌ亜目 Fissipedia
下目 : イヌ下目 Cynoidea
: イヌ科 Canidae
亜科 : イヌ亜科 Caninae
(補足階級)イヌ族 Canini [5]
: イヌ属 Canis
: タイリクオオカミ C. lupus
亜種 : イエイヌ C. l. familiaris
学名
Canis lupus familiaris
Linnaeus1758
シノニム
本文を参照
和名
イエイヌ
英名
Dog, Domestic dog

イヌ学名Canis lupus familiarisラテン語名:canis英語名[国際通用名]:dogdomestic dog)は、ネコ目(食肉目)- イヌ科- イヌ属に分類される哺乳類の一種。

概要 [編集]

学名(ラテン語)「Canis lupus familiaris仮名転写:カニス・ルプス・ファミリアーリス)」の語義は「犬、狼、家庭の者」であり、すなわち、「広義で言う犬の一族、その中の狼という一派、更にそのうちの、人とともにある一群」との命名意図がある。

イヌはカール・フォン・リンネ(1758年)以来、伝統的に独立種 Canis familiaris とされてきたが、イヌをタイリクオオカミ (Canis lupus) の亜種の一つとする学説(1993年、D.E.Wilson and D.A.M.Reeder)が、現在では受容されつつある。また、異説ではジャッカルから分化したとする。イヌ科の始原的動物(最古の祖先)と考えられるへスペロキオンen、イヌ科ヘスペロキオン亜科en])は約3,800万年前(古第三紀始新世後期前半)、ミアキス科en)から分化し、北アメリカ大陸の平原地帯で誕生した。この系統はその後、約2,300万年前(中新世)にはユーラシア大陸へ分布を拡げながらいっそうの進化を遂げてイヌ亜科の直接的祖先と目されるトマルクトゥスen)を生み出し、アフロ・ユーラシア大陸全域に適応放散し、そしてまた、アメリカ大陸にも移動して古い時代の種を一掃していったと考えられている。

広義の「イヌ」(後述)と区別して「イエイヌ」(英語名:domestic dog)とも言うが、これは伝統的な学名 C. familiaris(家族の-犬)に対応した呼称。

また、広義の「イヌ」は広くイヌ科に属する動物(イエイヌ、オオカミコヨーテジャッカルキツネタヌキヤブイヌリカオンなど)の総称でもあるが、日本ではこちらの用法はあまり一般的ではなく、欧文翻訳の際、イヌ科動物を表す dogs や canine の訳語として当てられるときも「イヌ類」などとしてイエイヌと区別するのが普通である。以下では狭義のイヌ(ヤマイヌなどを除くイエイヌ)についてのみ解説する。

イエイヌは人間の手によって作り出された動物群である。最も古くに家畜化されたと考えられる動物であり、現在も、ネコ Felis silvestris catus と並んで代表的なペットまたはコンパニオンアニマルとして、広く飼育され、親しまれている。

野生化したものを野犬(やけん、のいぬ)といい、日本語ではあたかも標準和名であるかのように片仮名で「ノイヌ」と表記されることも多いが、分類学上は種や亜種としてイエイヌと区別される存在ではない。

犬種については犬の品種一覧を参照。現在、ジャパンケネルクラブ (JKC) では、国際畜犬連盟 (FCI) が公認する331犬種を公認し、そのうち176犬種を登録してスタンダードを定めている。

世界全体では4億匹の犬がいると見積もられている。

分類 [編集]

シノニム [編集]

Canis lupus familiarisシノニム(異名)を示す。なかでも太字は有力説に基づくものである。

  • Canis aegyptius
  • Canis canis
  • Canis familiaris
  • Canis familiarus aegyptius
  • Canis familiarus domesticus
  • Canis familiarus melitaeus
  • Canis familiarus molossus
  • Canis familiaris saultor
  • Canis melitaeus
  • Canis molossus
  • Canis saultor

分布 [編集]

イヌの染色体は78本 (2n) あり、これは38対の常染色体と1対の性染色体からなる。これは同じイヌ属のディンゴオオカミ類、ジャッカル類、コヨーテ類などとも共通である。これらの種は交配可能であり、この雑種は生殖能力をもつ。ただし、これらは行動学的に生殖前隔離が起こり、また、地理的にも隔離されている。ジャッカル類は主にアフリカアジアに、コヨーテ類は北アメリカ大陸に分布する。

また、オーストラリア大陸と周辺地域に生息するディンゴと、ニューギニア島に生息するニューギニアン・シンギング・ドッグは、人類によって約4,000年前に持ち込まれたイヌであり、かつては別種とされていたが、現在はイエイヌとともに、タイリクオオカミの1亜種とされている。

生態的・形態的特徴 [編集]

イヌの属するイヌ科は、森林から開けた草原へと生活の場を移して追跡型の狩猟者となった食肉類のグループである。待ち伏せ・忍び寄り型の狩りに適応したネコ科の動物に対して、イヌ科の動物は、細長い四肢など、持久力重視の走行に適した体のつくりをしている。

また、イヌは古くから品種改良が繰り返されて、人工的に改良された品種には、自然界では極めて珍しい難産になるものも多く、品種によっては、出産時に帝王切開が必要不可欠となる(主にブルドッグ)。

骨格 [編集]

狼爪の例

イヌの歩き方は、指で体を支える趾行(しこう)性で、肉球(4つの指球(趾球)と1つの掌球(蹠球))と爪が地面につく。爪は先が尖っており、走るときにスパイクのような役割をする。ただし、ネコ科のものほど鋭くはない。爪を狩りの道具とするものが多いネコ類とは異なり、イヌ科の動物は爪を引っ込めることができず、各指は広げることができない。ネコ類と同じく、第3指(中指)と第4指(薬指)の長さが同じである。後肢の第1指(親指に相当する)は退化して4本指の構造となっているが、たまに後肢が5本指のイヌもいる(こうしたイヌの後肢の第1指「狼爪」と称する)。前肢は5本指の構造となっているが、やはり、その第1指も地面には着かない。

柴犬の後肢

前肢はほとんど前後にしか動かず、鎖骨は失われている。逆に股関節は、靭帯による制約が少ないために、他の家畜類に比べて可動性が広く、後肢を頭を掻くのに用いたりし、また、は排尿時に高く持ち上げるが、陰茎の位置からして大型犬のほうが有利ではある(はしゃがんで少し上げる)。反面、靭帯が少ないことは、しばしば股関節脱臼を起こす原因ともなっており、高齢犬・著しく体重が増えた犬・大型犬でその傾向が高い。

肋骨は13対で、ヒトより1対多く、走るのに必要な心臓は、体のわりに大きい。心臓ネコ目(食肉目)の他のグループの動物と違って球形に近く、特に左心室が非常に大きい。

尾は走行中の方向転換でとして働くが、オオカミなどと比べると細く短くなっており、また、日本犬に多く見られるように巻き上がっているものがあるのは、筋肉の一部が退化して弱くなっているためである。

陰茎に陰茎骨を具えていることも特徴である。

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歯式は 3/3・1/1・4/4・2/3=42 では42本(21対)あり、32本(16対)の歯をもつヒトや、28- 30本のネコと比べると、が長い分、歯の数も多い。ヒトと比較すると、切歯が上下各3本、前臼歯(小臼歯)が各4本と多く、後臼歯(大臼歯)は上顎で2本(下顎は3本)と少ない。イヌ亜目に共通の身体的特徴として、犬歯(牙)のほかに、裂肉歯と呼ばれる山型にとがった大きな臼歯が発達している。この歯は(はさみ)のようにして肉を切る働きをもつ。裂肉歯は、上顎の第4前臼歯と、下顎の第1大臼歯である。食物はあまり咀嚼せずに呑み込んでしまう。

消化器 [編集]

イヌ科グループの他の動物と同様、イヌは基本的には肉食であるが、植物質を含むさまざまな食物にも、ある程度までは適応する。消化管はそれほど長くないが、の長さが体長(頭胴長)の4- 4.5倍程度であるオオカミに対して、イヌのほうは5- 7倍と、いくらか長くなっている。肉食獣の中には盲腸をもたない種も存在するが、イヌはそれほど大きくないものの 5- 20cm程度の盲腸をもつ。

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イヌの耳下腺は、副交感神経性の強い刺激を受けると、ヒトの耳下腺の約10倍のスピードで唾液を分泌する。唾液は浅速呼吸(喘ぎ)により、口の粘膜と舌の表面から蒸散する。激しい運動のあと、イヌが口を開け、舌を垂らしてさかんに喘いでいるのはこのためである。イヌの体には汗腺が少ないが、この体温調節法は汗の蒸発による方法と同じくらい効果的であるという。

肛門には肛門嚢(こうもんのう)と呼ばれる一対の分泌腺があり、縄張りのマーキングに使われるにおいの強い分泌液はここから出ている。ジャコウネコハイエナのように外に直接開いてはおらず、細い導管で肛門付近に開口している。なお、イヌが雨に濡れたときなどに特に匂う独特の体臭は、主に全身の皮脂腺の分泌物によるものである。

嗅覚 [編集]

柴犬の鼻づら

警察犬の遺留品捜査や災害救助犬の被災者探索等でよく知られるように、イヌの感覚のうち最も発達しているのは嗅覚であり、においで食べられるものかどうか、目の前にいる動物は敵か味方かなどを判断する。また、コミュニケーションの手段としても、ここはどのイヌの縄張りなのかや、相手の犬の尻のにおいを嗅ぐことで相手は雄か雌かなどを判断することでも嗅覚は用いられたりする。そのため、イヌにとっては嗅覚はなくてはならない存在である。

イヌの嗅覚はヒトの数千から数万倍とされるが、その能力は有香物質の種類によっても大きく異なり、酢酸の匂いなどはヒトの1億倍まで感知できる。嗅覚は鼻腔嗅上皮にある嗅覚受容神経(嗅覚細胞)によって感受されるが、ヒトの嗅上皮が3-4cm²なのに対し、イヌの嗅上皮は18-150cm²ある。嗅上皮の粘膜を覆う粘液層中に分布する、「嗅毛」と呼ばれる線毛は、においを感覚受容器に導く働きをするが、イヌの嗅毛は他の動物のそれより本数が多く、長い。嗅細胞の層も、ヒトでは一層であるのに対して、イヌでは数層になっており、ヒトの500万個に対し、2億5千万から30億個あると推定されている。鼻腔の血管系もよく発達している。ヒトが顔や声について特別な記憶力をもつように、イヌは匂いについての優れた記憶力をもっている。イヌを含む動物群の鼻先のいつも湿っている無毛の部分を「鼻鏡」と呼ぶが、これは風の向きを探る働きをすると考えられる。

上述のようにイヌが嗅覚に優れた動物であることは事実であるが、ただし、他のさまざまな動物に比してイヌの嗅覚だけが特別に秀でているということではない。イヌ同様に探索目的での使役が多いブタイノシシ類)も引けを取らないと考えられているし、クマの研究者によればクマ類の嗅覚はイヌ(イエイヌ)の約7倍とされている。ゾウは嗅覚細胞の総量から言っても、能力においてイヌやクマを遥かに上回る動物として知られている。

聴覚 [編集]

イヌは聴覚も比較的鋭い。また、可聴周波数は 40-47,000 Hzヒトの 20-20,000 Hz に比べて高音域で広い。超音波を発する笛である犬笛(約30,000 Hz)はこの性質を利用したもの。聴力において、犬種による違いはほとんどみられない。

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視覚 [編集]

Shiba inu eyes.jpg

優れた動体視力を持っており、テレビ画像などはコマ送りにしか見えない。一方、イヌの眼には、赤色に反応する錐状体の数が非常に少ないといわれ、明るいときには、赤色はほとんど見えていない可能性が高い。色の明暗は認識できるが、全色盲に近いと考えられている。信号機だけは識別できるとされていたが、実はこれも灯火の点灯順序と人間の動きを関連づけて倣っていたに過ぎない事が確認されている。ネコやキツネの瞳孔が縦長であるのに対し、イヌの瞳孔は収縮しても丸いままである。 もっとも、最近の研究では、尿と同じ色の砂糖水は飲まないという実験結果が報告され、ヒトほどではないものの、イヌも色彩を認識できるのではないかという説も唱えられるようになった。また、犬種によってもかなり視力に差があることが知られている[要出典]

出産と成長 [編集]

メスの発情周期は7- 8か月であるが、犬種により差がある。妊娠期間は50- 70日。3- 12子を一度に出産するため、乳房を左右に5対持っているのが一般的である。生誕6- 12か月目で成犬の大きさになり、その後、2- 3か月目で性熟する。 これはオオカミの2年に比べて早熟である。小型犬は成犬に達するのが早い分、性熟も早い。

寿命 [編集]

イヌは10歳になると老犬の域になり、12歳から20歳程度まで生きる。ただし、犬種や生育環境によって異なり、基本的に大型犬のほうが小型犬よりも短命である。また、いわゆる座敷犬(家屋内に飼われている犬)よりも屋外で飼われている犬のほうが短命の傾向にある。一般的には、純血種よりも雑種のほうが長命である。おおむね、1年の間にヒトの6歳程度分の歳を取ると考えるとよい。 転じて、年単位で数年分に匹敵する急速に発達した科学技術(パソコン携帯電話等)を指して「ドッグイヤー」と呼ぶことがある。

2009年現在、ギネスブックにて「生存する世界最高齢のイヌ」と認定されているのは、アメリカ合衆国ニューヨーク州に暮らすダックスフントで、同年5月6日で21歳を迎えている[6]

社会性 [編集]

尻を嗅ぐことでイヌは互いの強弱が分かるという

イヌの特徴としてヒトと同じく社会性を持つ生き物であることが挙げられる。意思疎通をするための感情や表情も豊かで、褒める、認める、命令するなどの概念を持っている。ヒトに飼われているイヌは、人間の家族と自身を一つの群れの構成員と見なしていると考えられ、群れの中の上位者によく従い、その命令に忠実な行動を取る。この習性のおかげでイヌは訓練が容易で、古くからヒトに飼われてきた。最古の家畜とする説が有力である。子犬を入手して飼う場合には、親犬の元での犬社会に対する社会化教育と新しい飼い主と家庭および周囲環境への馴化(じゅんか)との兼ね合いから、ほぼ6週齢から7週齢で親元より直接譲り受けるのが理想的とされる。

知能 [編集]

品種によっては優れた学習能力を示す。他の犬に対して関心を示し、威嚇する行動を執る品種とそうでないものがある。この好奇心の強弱は、ドーパミン受容体D4遺伝子の多型領域の配列と関係があると言われている[要出典]。他の犬への関心の示し方、攻撃性は、(しつけ)によっても抑えることはある程度可能である。

イヌに与えてはいけない食べ物 [編集]

これらのものを好んで食べるイヌもいるため、飼い主が与えない、もしくは、拾い食いさせないようにするなどの注意が必要である。

これは、チョコレート類に含まれるテオブロミンという成分によって中毒を起こすためである。ネコにも同様の理由で与えてはいけない。
これは、ネギ類に含まれる成分がイヌの赤血球を溶かし、貧血を起こすためである(タマネギ中毒)。これはネコも同様。

イヌの起源 [編集]

イヌの起源も参照。

イヌは最も古くに家畜化された動物である。手に仔犬(イヌかオオカミかはっきりしない)を持たせて埋葬された、1万2千年ほど前の狩猟採集民の遺体が、イスラエルで発見されている。分子系統学的研究では1万5千年以上前に東アジアオオカミから分化したと推定されている。イヌの野生原種はタイリクオオカミ (Canis lupus) の亜種のいずれかと考えられている。イヌのDNAの組成は、オオカミとほとんど変わらない。イヌがオオカミと分岐してからの1万5千年という期間は種分化としては短く、イヌを独立種とするかオオカミの亜種とするかで議論が分かれているが、交雑可能な点などから亜種とする意見が優勢となりつつある。本項の分類もそれに従っている。イヌとオオカミの交雑に関しては、別項「狼犬(ハイブリッドウルフ)」も参照のこと。

人間社会との関わり [編集]

元来は、住居の見張り、次いで狩猟の補佐などのために家畜化されたと考えられるが、現在はほとんどが愛玩用であり、日本ではおよそ5世帯に1世帯がイヌを飼っている。長い年月をかけて交配が試みられ、ダックスフントトイ・プードルブルドッグなど、用途に応じたさまざまな品種が開発されてきた。19世紀に生まれたケネルクラブによって、外形、気質などにより犬種の人為的な選別が進んだが、20世紀以降に生まれた新犬種の多くは、見た目だけのために作られたものが多い。犬は人間によって最も人為的改良をくわえられた動物であると言える。

「シェイプシフター」(変身動物)と呼ぶ研究者がいるように、小さなチワワから大型のセント・バーナードまで、幅広いサイズと形態をもつ。

イヌは、下記のような形で人間に利用され、あるいは人間と関わってきた。

放牧された羊の番をするボーダーコリー
米国ノースカロライナ州はハンタースヴィル(en)の、ルーラルヒル農場にて。

犬と歴史・文化 [編集]

古代エジプトの壁画に描かれた犬 (紀元前2300年頃)

人間と暮らし始めた最も古い動物である犬は、民族文化や表現のなかに登場することが多い。

古代メソポタミア古代ギリシアでは彫刻や壷に飼い犬が描かれており、古代エジプトでは犬は死を司る存在とされ(→アヌビス神)、飼い犬が死ぬと埋葬されていた。紀元前に中東に広まったゾロアスター教でも犬は神聖とみなされるが、ユダヤ教では犬の地位が下り、聖書にも18回登場するが、ここでもとともに不浄の動物とされている。イスラム教では邪悪な生き物とされるようになった。現在でもイスラム圏では牧羊犬以外に犬が飼われることは少ないが、欧米諸国では多くの犬が家族同然に人々に飼われている。日本でも5世帯に1世帯が犬を飼っているといわれている。中世ヨーロッパの時代には、宗教的迷信により、魔女の手先(使い魔)として忌み嫌われ虐待・虐殺されたに対し、犬は邪悪なものから人々を守るとされ、待遇は良かった。

古代中国では境界を守るための生贄など、呪術や儀式にも利用されていた。知られる限り最古の漢字である甲骨文字には「犬」が「犬-oracle.svg」と表記され、「けものへん(犬部)」を含む「犬」を部首とする漢字の成り立ちからも、しばしばそのことが窺われる。古来、人間の感じることのできない超自然的な存在によく感応する神秘的な動物ともされ、と結びつけられることも少なくなかった(地獄の番犬「ケルベロス」など)。 漢字の成り立ちとして、「犬」の「`」は、を意味している。

歌川国芳 『武勇見立十二支・畑六良左エ門』
1840年頃の作。南北朝時代南朝方の武将畑時能と彼の飼い犬。 [7]

日本においては縄文時代の遺跡から埋葬された犬が見つかっており、古代日本人とともに犬を飼う習慣が日本列島に渡ってきたと考えられる。また、弥生時代長崎県原の辻遺跡などでは、解体された痕のある犬の骨が発見され、食用に饗されたことも窺える。『日本書紀』には日本武尊が神坂峠を超えようとしたときに、悪神の使いの白鹿を殺して道に迷い、窮地に陥ったところ、一匹の狗(犬)が姿を現し、尊らを導いて窮地から脱出させたとの記述がある。そして、『日本書紀』には天武天皇5年4月17日675年)の条に、4月1日から9月30日の期間、・犬・の、いわゆる肉食禁止令を出しており、犬を食べる人がいたことは明らかである。なお、長屋王邸跡から出土した木簡の中に子を産んだ母犬の餌に(呪術的な力の源とされた)を支給すると記されたものが含まれていたことから、長屋王邸では、貴重な米を犬の餌にしていたらしいが、奈良文化財研究所金子裕之は、「この米は犬を太らせて食べるためのもので、客をもてなすための食用犬だった」との説を発表した。奈良時代平安時代には貴族が鷹狩や守衛に使う犬を飼育する職として犬養部(犬飼部)が存在した。鎌倉時代には武士弓術修練の一つとして、走り回る犬を蟇目矢(ひきめや。丸い緩衝材付きの矢)で射る犬追物や犬を争わせる闘犬が盛んになった。 江戸幕府中期、江戸では野犬が多く、赤ん坊が食い殺される事件もあった。5代将軍徳川綱吉は戌年の戌月の戌の日の生まれであったため、彼によって発布された「生類憐れみの令」(1685- 1709年)において、犬は特に保護(生類憐みの令は人間を含む全ての生き物に対する愛護法令)され、元禄9年(1696年)には犬を殺した江戸の町人獄門という処罰まで受けている。綱吉は当時の人々から「犬公方」(いぬくぼう)とあだ名された。綱吉自身大の愛犬家でを百匹飼い、駕籠(かご)で運ばせていた。この法令が直接適用されたのは幕府の直轄領であったが、間接的に適用される諸藩でも将軍の意向に逆らうことはできなかった(ただし、この法令には戦国時代の影響の残る暴力的な気風を抑える目的があったという面も最近では指摘されている)。一般に明治以前までは農村などではと同様に食用とされることもあったが、食糧難の第二次世界大戦後しばらくまではその風習は各地で残り、忠犬ハチ公の子孫が盗難に遭い、食べられてしまったという記事が当時の新聞に残る。

欧米諸国では、古代から狩猟の盛んな文化圏のため、猟犬としての犬との共存に長い歴史がある。今日では特に英国米国ドイツなどに愛犬家が多い。世界で最古の1873年に設立された愛犬家団体である英国のケンネルクラブと1884年に設立された米国のアメリカンケンネルクラブがそれを物語っている。ヨーロッパ諸国の王家や貴族の間では、古来、伝統的に愛玩用・護衛用・狩猟用などとして飼われている。特にイングランド王のチャールズ2世およびエドワード7世は愛犬家として有名である。英国の女王ヴィクトリアコリーなどの犬を多数飼っていた。現在の英国女王エリザベス2世も愛犬家で知られている。英国王室は今でも犬舎を所有して飼育と繁殖を行っている。プロイセン(ドイツ)のフリードリヒ大王は常に身辺に数匹のイタリアン・グレーハウンドを侍らせていた。大王はポツダムにある墓所に愛犬達とともに葬られた。政治家では歴代のアメリカ合衆国大統領に愛犬家が多い。特にクーリッジ大統領とフランクリン・ルーズベルト大統領は愛犬家として有名である。近年ではジョージ・W・ブッシュ前大統領も愛犬家。

ジョヴァンニ・ボルディーニen) 『レジャーヌ夫人』(1885年

犬は一般に出産が軽い(安産)とされることから、日本ではこれにあやかって戌の日に安産を願い、犬張子や帯祝いの習慣が始まるようになる。

「人間の最良の友 (Man’s best friend)」と言われるように、その家族に忠実なところでプラスイメージもあるが、東西の諺や、日本語にある「犬死に」「犬侍」「犬じもの」「負け犬」などといった熟語では、よい意味で使われることはあまりない。また、忠実さを逆手にとって、権力の手先やスパイの意味でも「犬」が用いられる。また「雌犬」は女性への侮辱語として使われる。 植物和名では、イヌタデイヌビエen)など、本来その名をもつ有用な植物と似て非なるものを指すのにしばしば用いられる。

犬の鳴き声のオノマトペ [編集]

日本語 [編集]

犬の鳴き声を、現代日本では、一般的に「わんわん(ワンワン)」「きゃんきゃん(キャンキャン)」などの擬音語(オノマトペ、声喩)で表わされるのが普通である。そのため、これらの語を元にして犬のことを「ワンちゃん」「わんこワンコ)」「わん公ワン公)」などとも俗称する。なお、日本語、特に現代の日本語は、擬音語の発達した(あるいは氾濫したとも言うかも知れない)言語であり、他にも「ばうばう(バウバウ)」「ぐるるる(グルルル)」「うぉーん(ウォーン)」「くーん(クーン)」「きゃいーん(キャイーン)」等々、犬の感情の機微を捉えようとする多様な表現が生み出されている。

歴史的には「ひよひよ」「べうべう」などと書いて「ビョウビョウ」(研究者によっては「びよびよ」と表現[8])と発音していた期間が長く、狂言台詞などにその名残を見て取れる。江戸時代になって「わんわん(ワンワン)」が現われ、しばらくの間は従来語と共存していた[8]

日本語以外 [編集]

英語では bow-wow仮名転写以下同様]:バウワウ)、bark (バーク)、howl (ハウ)など、ロシア語では Гав-гав (ガフガフ)、中国語では「汪汪(ワンワン)」と鳴くとされる。

犬を主題とした作品・キャラクターなど [編集]

犬は、マスコットや、漫画など現代的フィクションキャラクターなどとしても頻繁に登場する。犬がテーマとなった、あるいは、犬を主要なキャラクターとする映像作品・文学作品等については、イヌを主題とする作品一覧Category:架空の犬を参照。

歴史に名を残した犬 [編集]

人間との共生が最も古い動物故に多くの犬たちが名犬とされてきた。 ノンフィクションの分野でも、忠犬ハチ公南極物語などのように、実在した犬にまつわるエピソードや芸術作品などが数多く存在する。 (以下の犬たち以外にも名を残したのも多くいる。)

  • 1700年代
    • 1781年 名前不明(狆) – 酒井雅楽頭の愛犬。光格天皇より六位の位を下賜された。
  • 1880年代
    • 1889年 ツン(薩摩犬) – 西郷隆盛ウサギ狩時の愛犬である雌犬。上野恩賜公園に立てられた銅像にその銅像が寄り添って立てられた。(製作者は後藤貞行、モデルは仁礼景範海軍中将の飼い犬である雄犬)
    • 1895年 オウニー(雑種) – 1888年に米国のニューヨーク州の郵便局のマスコットとなり、郵政長官から旅行許可証を貰い、船に乗って世界一周をした。
  • 1900年代
    • 1900年 ニッパー(フォックス・テリア) – 円盤式蓄音器の発明者ベルリナーが感動した以前の飼い主の声に耳を傾ける肖像画を商標登録し、現在でも日本ビクターなどに使われている(His Master’s Voice, HMV の商号はこれによる)。

      詳細は「ニッパー (犬)」を参照

    • 1902年 名前不明 – ロシアの生理学者イワン・パブロフ博士の飼い犬で、条件反射の実験に使われ、以降、「パブロフの犬」といえば条件反射のことを指すようになる。
    • 1923年 ボビー(コリー種) – 米国インディアナ州で飼い主とはぐれ、6か月でおよそ4000kmを歩き、離れた飼い主の住むオレゴン州まで戻ってきた。
  • 1930年代
  • 1940年代
    • ブロンディジャーマン・シェパード・ドッグ) – ナチスドイツの総統ヒトラーの愛犬。1945年ベルリンの防空壕で主人と運命をともにした。
    • チップス(雑種) – 第二次世界大戦中数々の勇敢な行為により、アメリカ陸軍から二つの勲章を授与された。
  • 1950年代
  • 1980年代
    • 盲導犬サーブ – 冬の日に飼い主を事故から守り足にけがを負った。
  • 2000年代
    • 2008年 ベラ(シープドッグ系雑種) – ギネス非公認の世界最高齢記録保持犬。3歳の時に保護されたが、正式な出生証明書が無かった為、ギネス記録として公認されず。2008年、老衰により29歳で死去。
    • 2009年 シャネル(ワイアーヘアード・ミニチュア・ダックスフント) – ギネス公認の世界最高齢記録を保持していた犬。生後6ヶ月の時、収容施設から保護された。2008年8月28日、老衰により21歳で死去。

障害犬 [編集]

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近年高まるペットブームの中、一部の業者によって人気品種の乱繁殖が行われている。そして近親交配の結果、先天的障害を持つ犬が増加している。生まれながら障害を発症している犬は処分されることが多い。国はこうした障害犬の増加をうけ、動物管理法を改正し悪質業者を処分できるようになった。しかし、結局のところ消費者の意識が変わらなければ障害犬を産む乱繁殖をとめることはむずかしい。

犬の登場する諺・故事成語 [編集]

ウィキクォート
ウィキクォートイヌに関する引用句集があります。

五十音順に並べる。

  • 赤犬が狐追う
  • 一犬影に吠ゆれば万犬声に吠ゆ
  • 一犬虚に吠ゆれば万犬実を伝う
    • 一犬吠形百犬吠聲 – 王符『潜夫論』賢難
  • 犬一代に狸一匹
  • 犬が西向きゃ尾は東
  • 犬が星見る
  • 犬腹(いぬっぱら)
  • 犬に肴の番
  • 犬になっても大家の犬
  • 犬になるなら大所の犬になれ
  • 犬にも食わせず棚にも置かず
  • 犬に論語/犬に念仏猫に経
  • 犬の川端歩き(犬川)/犬の子の徒歩き
  • 犬の糞で敵を討つ
  • 犬の遠吠え/負け犬の遠吠え
  • 犬の蚤の噛み当て
  • 犬は三日の恩を三年忘れず
  • 犬骨折って鷹の餌食/犬骨折って鷹に捕らる
  • 犬も歩けば棒に当たる
  • 犬も頼めば糞食わず
  • 犬も朋輩、鷹も朋輩
  • 犬を喜ばせる
  • 飢えた犬は棒を恐れず
  • 兎を見て犬を放つ
  • 内は犬の皮、外は虎の皮
  • 粤犬(えっけん)雪に吠ゆ
    • 粤犬吠雪/越犬吠雪
  • 大犬は子犬を責め、子犬は糞を責める
  • 尾を振る犬は打てず/尾を振る犬は叩かれず             
  • 飼い犬に手を噛まれる
  • 垣堅くして犬入らず
  • 画虎類狗/画虎成狗/描虎類狗
  • 食いつく犬は吠えつかぬ
  • 狗緇(くし)衣に吠ゆ
    • 狗吠緇衣
  • 狗頭角を生ず
    • 狗頭生角
  • 狗尾続貂
  • 暗がりの犬の糞
  • 鶏犬の声相聞こゆ
  • 鶏犬も寧(やすら)かならず
    • 鶏犬不寧
  • 鶏鳴狗盗
  • 桀の犬尭に吠ゆ
    • 桀犬吠尭
  • 犬猿の仲/犬と猿/犬と猫
  • 犬牙相制す
  • 犬馬の心
  • 犬馬の年/犬馬の齢
  • 犬馬の養い
  • 犬馬の労を取る
  • 犬羊の質
  • 狡兎死して走狗烹(に)らる – 司馬遷史記』「越王句踐 世家」
    • 狡兎死 走狗烹
    • 狡兎走狗
  • 狡兎死して良狗烹(に)らる。- 司馬遷『史記』「(韓信)淮陰侯 列伝」→ 韓信范蠡
    • 狡兎死 良狗烹
    • 狡兎良狗
  • 米食った犬が叩かれず、糠食った犬が叩かれる/笊(ざる)舐めた犬が科かぶる
  • 蜀犬(しょっけん)日に吠ゆ
    • 蜀犬吠日
  • 棄犬(すていぬ)に握り飯
  • 跖狗吠尭
  • 喪家の狗
  • 鼠窃狗盗
  • 泥車瓦狗
  • 陶犬瓦鶏
  • 唐犬額
  • 夏の風邪は犬もひかぬ
  • 夏の蕎麦は犬も食わぬ
  • 白衣蒼狗/蒼狗白衣
  • 飛鷹走狗
  • 夫婦喧嘩は犬も食わぬ
  • 吠える犬は噛まぬ
  • 煩悩の犬追えども去らず
  • 邑犬群吠
  • 鷹犬之才
  • 羊頭狗肉/羊頭を懸げて狗肉を売る
  • 楊布之犬
  • 狼心狗肺
  • 驢鳴犬吠/驢鳴狗吠
  • 淮南之犬

名前にイヌを持つもの [編集]

生物の名、特に植物の名で、イヌが付くものも多い。イヌの特徴などに似ていることによるものもあるが、多くの場合、イヌが付かないものに比べて、より有用性が低かったり、使えなかったりすることを意味する。(派生語も参照のこと)

その他 イヌについて [編集]

コメント / トラックバック10件

  1. Mr WordPress より:

    こんにちは。これはコメント例です。
    コメントを削除するには、ログインしてその投稿のコメントを表示させてください。そこでコメントを編集したり削除したりすることができます。

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